ベイヒルズ社労士事務所便り2019年4月号「気になる!企業のソーシャルリスク対策の実態」
気になる!企業のソーシャルリスク対策の実態
◆従業員の不適切動画投稿問題で改めて問われる企業の対策
飲食店やコンビニの従業員が投稿した不適切動画問題が、企業の評判に悪影響を及ぼしかねない事件が、立て続けに起こりました。
対応については、従業員に損害賠償請求訴訟を起こす決定をした企業、全店休業して社員研修を行う決定をした企業と様々ですが、SNSを活用する企業・個人の増加する中、いつ問題に巻き込まれても不思議はありません。まだ社会人としての自覚に乏しい新入社員の入社も近づくこの時期は、自社の対策を確認しておくべき時期とも言えるでしょう。
◆多くが何らかの対策を講じ、4割が研修を実施
ウェブサイトやアプリのユーザーサポート等を行うアディッシュ株式会社が、2018年12月に行った調査によれば、ソーシャルリスク対策について「未実施。今後も実施なし」と回答したのは5.2%で、多くの企業が対策を行っています。
具体的な内容を実施率で見ると、「研修の実施」39.1%、「ガイドライン作成」37.2%、「マニュアル作成」30.9%が上位に入っています。
しかし、従業員数別に見ると100人以上300人未満の研修の実施率50%に対し、100人未満では19.1%と、対策が不充分である可能性があります。
◆雇入れ時に自筆の誓約書を書かせるのも有効?
人事コンサルタントの増沢隆太氏によれば、研修実施や朝礼時の啓発を継続的に行うとともに、雇入れ時、自筆で、バイトテロを起こした場合の損害賠償を約束させる誓約書を取り交わすのが望ましいそうです。例えば、店舗復旧に必要な清掃や消毒、商品の廃棄や交換、休業補償などを当事者負担で行うことを明文化しておくのだそうです。用意された誓約書にサインさせるのではなく、従業員自身に内容を書かせることが、バイトテロ行為を行うことのリスクを自覚させるのに有効だということです。
◆未実施の場合は早急に対策を検討しましょう
不適切動画を投稿した本人による「せいぜいクビになるだけ」という趣旨の発言が報道にもありましたが、不適切動画の投稿はスマートフォン1台あれば簡単にできますし、投稿する従業員自身も社会問題に発展しかねないリスクを自覚していない可能性があります。
新入社員だけでなく、既存の従業員も対象に、一度研修の実施を検討してはいかがでしょうか。
一般化するリファラル採用と、その留意点
◆「リファラル採用」とは
リファラル採用(referral recruiting)をご存知でしょうか。「自社従業員に、採用候補者を紹介してもらう制度」をいいます。
◆最新調査結果
株式会社リクルートキャリア「リファラル採用で声をかけられた人の実態調査」によれば、「リファラル採用の制度がありますか」という質問に、「制度があり、推進している」が48%、「制度があるが、推進していない」が23%と、回答企業の7割以上で社内制度化されています。
ほかにも、「知人の会社に誘われた人のうち、実際に選考を受けた人」が54.8%にのぼるなど、広く行われている結果となりました。
◆リファラル採用のメリット
企業にとってのメリットとして、「採用のミスマッチが起こりにくい」(紹介者が詳細に企業説明をするため)、「定着率が高い」(紹介者による入社後のアフターフォローのため)、「採用コストが低い」、「通常の採用活動では応募しないような人材を採用できる」、などが挙げられます。
一方、デメリットは、「不採用時の人間関係悪化」、「紹介者が退職の際、採用者の意欲低下」などが懸念されることがあります。
◆紹介者へのインセンティブの相場
採用に至った場合、紹介者にインセンティブ(成功報酬)を支払う場合もあります。
エン・ジャパン株式会社「リファラル採用意識調査」によれば、リファラル採用実施企業の44%が、インセンティブを支給しています。また、その支給額は「3万円から10万円」が最多(52%)とのことです。
◆インセンティブ支給の留意点
紹介者にインセンティブ支給の際は、「賃金として支払う必要がある」点に留意しましょう。「被用者で当該労働者の募集に従事するもの」に「賃金、給料その他(略)報酬」以外を支払うことは、職業安定法40条(報酬の供与の禁止)違反となるからです。
リファラル採用を社内制度化するにあたっては、労働局等に相談のうえで、就業規則や賃金規程に明文化するとよいでしょう。