ベイヒルズSR通信 11月号「建設業の労働時間上限規制に向けた対策は進んでいますか?」「増加する「ビジネスケアラ―」と介護離職防止対策」
建設業の労働時間上限規制に向けた対策は進んでいますか?
2024年4月より、これまで猶予されていた建設業の時間外労働の上限規制が適用となります。
◆時間外労働の上限規制
上限規制後の労働時間は原則として月45時間、年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができません。
また、臨時的な特別な事情があり、労使が合意する場合(特別条項)でも以下を守らなければなりません。
- 時間外労働は年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計について2~6ヵ月平均80時間以内
- 時間外労働が月45時間を超えることができるのは6回が限度
>>詳細リンクはこちらからご覧ください。【厚生労働省 時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務】
>>詳細リンクはこちらからご覧ください。【厚生労働省 建設業 時間外労働の上限規制わかりやすい解説】
◆時間外労働の傾向に業種の差
建設業の時間外労働については、帝国データバンクの「建設業の時間外労働に関する動向調査」(2023年8月時点)によると、次のように建設業全体の時間外労働時間は前年を下回っているものの、以下のように業種により増加している実態もみられました。
建設業種の時間外労働時間DI(※)
建設業 |
48.8 |
はつり・解体工事業 |
54.4 |
内装工事業 |
52.4 |
建築工事業(木造建築工事業を除く) |
51.8 |
鉄骨工事業 |
51.6 |
※ 時間外労働時間DIとは、前年同月と比べた時間外労働時間の増減を7段階の評価で算出した値。DIは0~100の値をとり、50超が増加、50未満は減少を表している。
◆業種に応じた対策を
「建設業」としては48.8(年平均でも48程度)で減少となっており、中には土木工事業(造園工事業を除く)で44.8といった業種もありますが、上に挙げた業種はこの1年を通して見たときも、50を超えることが多いようです。
一口に建設業といっても業種により特徴があります。また、この調査結果を見ると、季節的な繁閑のタイミングにも業種の差があるようです。
来年4月1日まで残された時間は多くありません。それぞれの業種特性を踏まえ、時間外労働対策や時差出勤、テレワーク、時間年休といった取組みを早急に具体化していく必要があります。
一方、人材確保のためには、社内コミュニケーションを促進するなどの職場環境の改善も必要です。さまざまな課題がありますが、一つひとつ取り組んでいきましょう。
>>詳細リンクはこちらからご覧ください。【帝国データバンク「建設業の時間外労働に関する動向調査(2023年8月)」】
増加する「ビジネスケアラ―」と介護離職防止対策
◆増える「ビジネスケアラ―」
「ビジネスケアラ―」とは、仕事をしながら家族等の介護を行う人を指す言葉で、経済産業省によると、2030年をピークに318万人に達すると推計されています。また、これによる経済損失は約9兆1,792億円にのぼるともいわれています。
◆介護離職防止の企業向けガイドライン
厚生労働省は、会社員が家族等の介護で離職するのを防ぐ目的で、企業向けの指針をまとめると発表しました。この指針には、企業が介護休業や休暇制度、介護保険サービス等について対象従業員に周知させたり、外部の専門家と連携し、介護事業所に提出する書類作成を肩代わりしたり、相談窓口を設置したりと、従業員の介護離職を防ぐ取組みを促す内容が盛り込まれる予定です。
◆介護のための短時間勤務制度がある会社は約8割
人事院の調査によると、介護のための短時間勤務がある企業は78.4%となっています。そのうち、短縮する週当たりの時間数の上限や、短時間勤務を行える期限の上限を設けている企業はいずれも88%以上を占めています。
◆介護離職防止において企業が求められること
育児・介護休業法に基づいて、既に休業・休暇制度を設けている企業は大多数だとは思いますが、従業員に周知されていなかったり、運用がうまくいっていなかったりするケースもあるようです。今年度中にも、介護離職防止の企業向けガイドラインが整備される予定ですので、ガイドラインが出て慌てて対応することのないよう、自社の制度をあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
>>詳細リンクはこちらからご覧ください。【経済産業省「介護政策」】
>>詳細リンクはこちらからご覧ください。【人事院「令和4年民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要」】
>>ベイヒルズSR通信(2023.11月号)PDF版はこちらからご覧ください。