ベイヒルズ社労士事務所便り2022年 2月号「「シフト制」労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項~厚生労働省」「雇用保険マルチジョブホルダー制度がスタート」
「シフト制」労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項~厚生労働省
パートやアルバイトを中心に、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間ごとに作成される勤務割や勤務シフトなどにおいて初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような形態があります。
このような契約には柔軟に労働日・労働時間を設定できる点で当事者双方にメリットがある一方、労働紛争が発生することもあります。厚生労働省が、使用者が現行の労働関係法令等に照らして留意すべき事項を取りまとめましたので、抜粋してご紹介します。
◆シフト制労働契約の締結に当たっての留意事項
- 始業/終業時刻
労働契約の締結時点で、すでに始業と終業の時刻が確定している日については、労働条件通知書などに単に「シフトによる」と記載するだけでは不足であり、労働日ごとの始業/終業時刻を明記するか、原則的な始業/終業時刻を記載した上で、労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等を併せて労働者に交付する必要があります。 - 休 日
具体的な曜日等が確定していない場合でも、休日の設定にかかる基本的な考え方などを明記する必要があります。
◆シフト制労働者を就労させる際の注意点
- 年次有給休暇
所定労働日数、労働時間数に応じて、労働者には法定の日数の年次有給休暇が発生します。使用者は、原則として労働者の請求する時季に年次有給休暇を取得させなければなりません。「シフトの調整をして働く日を決めたのだから、その日に年休は使わせない」といった取扱いは認められません。 - 休業手当
シフト制労働者を、使用者の責に帰すべき事由で休業させた場合は、平均賃金の60%以上の休業手当の支払いが必要です。
雇用保険マルチジョブホルダー制度がスタート
◆雇用保険マルチジョブホルダー制度とは?
令和4年1月1日から65歳以上の労働者を対象に「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設されました。これは、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して以下の要件を満たす場合に、本人からハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。
【適用要件】
- 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
- 2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
なお、3つ以上の適用事業に雇用されている場合で、いずれも1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満であっても、加入の手続はその3つ以上の適用事業所から2つの事業所を選択して行うことになり、所定労働時間の合算はその選択した2つの事業所の労働時間のみ合算することができます。
◆手続きは本人が行うのが原則
マルチ高年齢被保険者であった方が失業した場合には、一定の要件を満たせば、高年齢求職者給付金を一時金で受給することができます。老後の生活資金や介護費用等のために、利用を検討する労働者もいるかもしれません。ただし、この制度では、マルチ高年齢被保険者としての適用を希望する本人が手続きを行う必要があります。手続きに必要な証明(雇用の事実や所定労働時間など)は、本人から事業主に記載を依頼して、本人の住居所を管轄するハローワークに申し出ることになっています。
◆マルチ高年齢被保険者の資格喪失
取得時と異なり、労働者の任意による喪失手続は行えず、被保険者の要件を満たさなくなったときのみ資格喪失手続を行うことができます。
【資格喪失要件】
- 事業所で週所定労働時間が20時間以上となったとき(その後一般の資格取得が必要)
- 事業所の合計週所定労働時間が20時間未満となったとき
- 一方の事業所の週所定労働時間が5時間未満となったとき
- (どちらか一方、または両方の)事業所を離職したとき
- 死亡したとき
◆事業主に求められること
労働者から手続きに必要な証明を求められた場合は、速やかに対応しましょう。
また、マルチジョブホルダーが申出を行ったことを理由として、解雇や雇止めなどの不利益な取扱いを行うことは法律上禁じられています。マルチジョブホルダーがマルチ高年齢被保険者の資格を取得した日から雇用保険料の納付義務が発生しますので、制度についてしっかりと理解し、対応していきましょう。