ベイヒルズ社労士事務所便り2021年7月号「新型コロナワクチンの職域接種と労働時間の取扱い 」
新型コロナワクチンの職域接種と労働時間の取扱い
新型コロナウイルス感染症ワクチンの職域接種が、企業でも本格的にスタートしました。
政府は令和3年11月接種完了の目標に向け、接種を加速させたい考えです。
◆職域接種の概要
職域接種の実施形態は、企業単独実施のほか、中小企業が商工会議所等を通じての共同実施、下請け企業・取引先も対象とするものがあります。実施の際に求められる主な要件は、以下のとおりです。
① 医療従事者や運営のスタッフ等、必要な人員を企業や団体等が自ら確保すること。また、副反応報告などの必要な対応を行うことができること。
② 接種場所・動線等の確保についても企業や団体等が自ら確保すること。
③ 社内連絡体制・対外調整役を確保すること(事務局を設置すること)。
④ 同一の接種会場で2回接種を完了すること、最低2,000回(1,000人×2回接種)程度の接種を行うことを基本とする。
⑤ ワクチンの納品先の事業所でワクチンを保管の上、接種すること。
◆ワクチン接種時の休暇や労働時間の取扱い
ワクチン接種自体は業務ではありませんが、接種に費やす時間や副反応が出た場合の労働時間や休暇の取扱いが気になるところです。厚生労働省は以下のような取り扱いが望ましいとしています。
① ワクチン接種や、接種後に副反応が発生した際、療養等に活用できる休暇制度の新設
② 既存の病気休暇や失効年休積立制度(失効した年次有給休暇を積み立て、病気療養等に使える制度)活用への見直し
③ ワクチン接種時の時間は、特段のペナルティなく中抜け(終業時刻の繰り下げ等により調整する)や出勤みなし(労働時間とみなす)を認めること
なお、上記の取り組みに伴い就業規則を変更する場合は、変更後の就業規則を社内への周知が必要です。(※常時10人以上の労働者を使用する事業場の場合は、就業規則の変更手続が必要となります。)
こうした対応に当たっては、ワクチン接種を希望する労働者にとって活用しやすいものになるよう、労働者の希望や意向も踏まえて検討していくことが重要です。
【厚生労働省「職域接種に関するお知らせ」】
【厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」】より
夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定に新基準
◆厚生労働省から新基準が公表されました
厚生労働省から、「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について(令和3年4月30日保保発0430第2号・保国発0430第1号)」という通知が出されました。これにより、夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について、令和3年8月1日より新基準が適用されます。
◆背景
令和元年に成立した健康保険法等の一部を改正する法律(令和元年法律第9号)の附帯決議で、「年収がほぼ同じ夫婦の子について、保険者間でいずれの被扶養者とするかを調整する間、その子が無保険状態となって償還払いを強いられることのないよう、被扶養認定の具体的かつ明確な基準を策定すること」とされ、これを踏まえたものです。
◆夫婦とも被用者保険の被保険者の場合の取扱い(新基準)
基準には、「夫婦の一方が国民健康保険の被保険者の場合の取扱い」、「主として生計を維持する者が健康保険法第 43 条の2に定める育児休業等を取得した場合の取扱い」などが定められており、ここでは「夫婦とも被用者保険の被保険者の場合の取扱い」の新基準をみてみます。
① 被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、被保険者の年間収入(過去・現時点・将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする。以下同じ。)が多い方の被扶養者とする。
② 夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。
③ 夫婦の双方又はいずれか一方が共済組合の組合員であり、その者に被扶養者とすべき者に係る扶養手当又はこれに相当する手当の支給が認定されている場合は、その認定を受けている者の被扶養者として差し支えない。なお、扶養手当等が認定されていないことのみを理由に被扶養者として認定しないことはできない。
④ 被扶養者として認定しない保険者等は、当該決定に係る通知を発出する。当該通知には、認定しなかった理由(年間収入の見込み額等)、加入者の標準報酬月額、届出日及び決定日を記載することが望ましい。被保険者は当該通知を届出に添えて次に届出を行う保険者等に提出する。
⑤ ④により他保険者等が発出した不認定に係る通知とともに届出を受けた保険者等は、当該通知に基づいて届出を審査することとし、他保険者等の決定につき疑義がある場合には、届出を受理した日より5日以内(書類不備の是正を求める期間及び土日祝日を除く。)に、不認定に係る通知を発出した他保険者等と、いずれの者の被扶養者とすべきか年間収入の算出根拠を明らかにした上で協議する。この協議が整わない場合には、初めに届出を受理した保険者等に届出が提出された日の属する月の標準報酬月額が高い方の被扶養者とする。
⑥ 標準報酬月額が同額の場合は、被保険者の届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。なお、標準報酬月額に遡及訂正があった結果、上記決定が覆る場合は、遡及が判明した時点から将来に向かって決定を改める。
⑦ 夫婦の年間収入比較に係る添付書類は、保険者判断として差し支えない。
【厚生労働省「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」PDF】