ベイヒルズ社労士事務所便り2020年12月号「同一労働同一賃金の取組みと賃金動向」
来年4 月1 日施行!同一労働同一賃金の取組みと賃金動向
◆「同一労働同一賃金」とは?
同一企業における、いわゆる正社員と非正規社員(有期雇用労働者、パートタイマー、派遣労働者)間の不合理な待遇差の解消を目指し、基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されます。また、非正規社員から求められた場合は、正社員との待遇差の内容や理由などについて、事業主が説明すること、また説明を求めたことを理由に不利益取扱いをしないことが義務付けられます。2020 年4 月1 日より大企業と労働者派遣に、2021 年4月から中小企業にそれぞれ適用です。
◆企業・労働者はどんな反応をしている?
11 月6 日の閣議に提出された「令和2 年度 年次経済財政報告」より、同一労働同一賃金の取組みや影響について一部ご紹介します。
≪業務内容等が同じ正社員との待遇差について、“納得できない”と回答した非正規社員の割合≫
「賞与」37.0%、「定期的な昇給」26.6%、「退職金」23.3%、「人事評価・考課」12.7%
≪取組みの実施率≫
「業務内容の明確化」35.2%、「給与体系の見直し」34.0%、「諸手当の見直し」31.3%、「福利厚生制度の見直し」21.2%、「人事評価の一本化等」17.7%
≪企業が感じている課題≫
「費用がかさむ」30.4%、「取り組むべき内容が不明確」19.5%、「社内慣行や風習を変える事が難しい」18.7%、「効果的な対応策がない、分からない」16.5%、「柔軟な調整」16.1%となっています。
◆対応に必要な費用の一部に助成金を活用することもできます
厚生労働省のキャリアアップ助成金は、計画書を提出して6つのコースから選んで非正規社員の待遇改善等を行う場合に、費用の助成が受けられます。
近年、「同一労働同一賃金」に向けて対応を進める企業の多で利用されていますが、申請が適正になされず不正受給と判断されると、支給取消しやペナルティが課されるだけでなく企業名も公表されてしまいます。助成金の利用も含めて、「同一労働同一賃金」への対応は、専門家に相談しながら進めるのがよいでしょう。
来年4 月施行!70 歳までの就業機会の確保(努力義務)について
◆これまでの高齢者雇用安定法(65 歳までの雇用確保(義務))の内容
高年齢者雇用安定法は、以下を定めています。
①60 歳未満の定年禁止、
②65 歳までの雇用確保措置
①は、事業主が定年を定める場合は、その定年年齢は60 歳以上としなければなりません。(法8 条)
②は、定年を65 歳未満に定めている事業主は、ア.65 歳までの定年引上げ、イ.定年制の廃止、ウ.65 歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)の導入、のいずれかの措置を講じなければならないといものです。(法9条)
①②いずれも当該労働者を60 歳まで雇用していた事業主を対象に義務づけられています。
◆令和3 年4 月1 日からの改正~70 歳までの就業機会の確保(努力義務)の内容
65 歳から70 歳までの就業機会を確保することを目的に、来年4 月1 日からは、上記65歳までの雇用確保(義務)に加え、以下のいずれかの措置を講ずる努力義務が新設されました。当該労働者を60 歳まで雇用していた事業主が対象となります。
① 70 歳までの定年引上げ
② 定年制の廃止
③ 70 歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
④ 高年齢者が希望するときは、70 歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤ 高年齢者が希望するときは、70 歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
ア.事業主が自ら実施する社会貢献事業
イ.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
※④⑤は創業支援等措置(雇用によらない措置)となり、過半数労働組合等の同意をえて導入。
◆留意点
①70 歳までの就業確保措置は努力義務となるため、対象者を限定する基準を設けることが可能となります(70 歳までの定年引上げ、定年制の廃止を除く)。ただし、対象者の基準を設ける場合は、労使間で十分に協議した上で過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいとされています。また、労使間での十分な協議の上で設けられた基準であっても、事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど法の趣旨等に反するものは認められません(不適切な例として、会社が必要と認めた者に限るなど)。
②継続雇用制度、創業支援等措置を実施する場合において、「心身の故障のため業務に耐えられないと認められること」「勤務(業務)状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責(義務)を果たし得ないこと」といった事項等を就業規則や就業支援等措置の計画に記載した場合には、契約を継続しないことが認められます。