ベイヒルズ社労士事務所便り2021年8月号「健康保険法改正で傷病手当金の通算や育休中の社会保険料免除が変更に」「新型コロナウイルスワクチン接種証明書の申請受付 7月26日より」
健康保険法改正で傷病手当金の通算や育休中の社会保険料免除が変更に
「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」が6月11日に公布されています。以下で、主な改正事項をご紹介します。
◆傷病手当金の支給期間の通算化(令和4年1月1日から施行)
傷病手当金は、業務外の事由による病気やケガの療養のために休業するとき、一定の要件に該当した場合に支給されるもので、支給期間は、支給が開始された日から最長1年6カ月です。これは、1年6カ月分支給されるということではなく、1年6カ月の間に仕事に復帰した期間があり、その後再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合でも、復帰期間も含めて1年6カ月に算入されます。支給開始後1年6カ月を超えた場合は、仕事に就くことができない場合であっても、傷病手当金は支給されません。
今回の改正は、出勤に伴い不支給となった期間がある場合、その分の期間を延長して支給を受けられるように、支給期間の通算化を行うというものです(支給を始めた日から通算して1年6カ月支給)。がん治療などで入退院を繰り返すなど、長期間にわたり療養のための休暇をとりながら働くケースなどがあることから、改正になりました。
◆任意継続被保険者制度の見直し(令和4年1月1日から施行)
任意継続被保険者制度は、健康保険の被保険者が、退職した後も選択によって引き続き最大2年間、退職前に加入していた健康保険の被保険者になることができる制度です。
保険料は全額被保険者負担(事業主負担なし)で、従前の標準報酬月額または、当該保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額のうち、いずれか低い額に保険料率を乗じた額を負担します。任意継続被保険者となった日から2年を経過したときや、保険料を納付期日までに納付しなかったとき、就職して健康保険などの被保険者資格を取得したとき、後期高齢者医療の被保険者資格を取得したとき、被保険者が死亡したときのいずれかに該当するときは、被保険者の資格を喪失します。
今回の改正は、任意継続被保険者の保険料の算定基礎の見直しや(健康保険組合が規約に定めた場合は、当該保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額より従前の標準報酬月額が高い任意継続被保険者については、従前の標準報酬月額を保険料の算定基礎とすることができるようになる)、被保険者からの申請による資格喪失を可能とするというものです。
◆育児休業中の保険料免除要件の見直し(令和4年10月1日から施行)
育児休業中の社会保険の保険料免除は、現在、月の末日時点で育児休業をしている場合に、当該月の保険料(賞与保険料含む)が免除される仕組みです。そのため例えば、月中に2週間の育休を取得したとしても、休業期間に月の末日を含まなければ免除の対象にはなりません。
今回の改正は、短期の育児休業の取得に対応して、育児休業期間に月末を含まない場合でも、月内に2週間以上の育児休業を取得した場合には当該月の保険料を免除するとともに、賞与に係る保険料については1カ月を超える育児休業を取得している場合に限り免除の対象とするというものです。
新型コロナウイルスワクチン接種証明書の申請受付 7月26日より
◆当面は海外渡航限定
欧州の主要国を中心に、新型コロナウイルスワクチンの接種証明書の提示により、いわゆる水際対策を緩和する動きがあることを受け、日本でも7月26日から市区町村において接種証明書発行の申請受付が開始されることとなりました。
◆接種証明書の内容
6月25日に内閣官房が開催した自治体向け説明会資料によれば、接種証明書には、新型コロナウイルスワクチンの接種記録(ワクチンの種類、接種年月日など)と接種者に関する事項(氏名、生年月日、旅券番号など)が記載されます。
接種を受けると接種済証が交付されますが、こちらには英語の表記がなかったり偽造防止対策といった課題があったりするということです。
◆接種証明書の交付を受けるには?
申請手続のデジタル化も検討されていますが、当面は書類申請のみとされ、窓口か郵送での受付となります。
申請時には①申請書、②パスポート、③接種券、④接種済証か接種記録書(またはその双方)が必ず必要となります。
そのほか、パスポートに旧姓・別姓・別名(英字)の記載がある場合は旧姓・別姓・別名が確認できる本人確認書類、代理人による申請の場合は委任状、郵送する場合は切手を貼って返送先住所を記載した返信用封筒も必要となります。
◆国によって異なる水際対策
JETROが7月7日に公表している海外各国の水際対策は様々です。EU加盟各国では、接種証明書の提示により陰性証明書の提示や自主隔離等の義務が免除されますが、東南アジア地域では、シンガポールを除いて接種率が相対的に低く、ワクチン証明書に基づく入国制限や入国後の防疫措置の緩和は行われていないということです。
今後、ワクチン接種が進むとビジネスシーンで海外へ赴くケースも増えてくることが考えられますが、渡航前には渡航先がどのような対策をとっているかの確認も求められることとなりそうです。