「ベイヒルズ社労士事務所便り2018年4月号」を発行しました
手当等を活用して、従業員に会社の近くに住んでもらう試み
◆「引っ越し難民」発生中!
今年は、希望のタイミングで引っ越しができない「引っ越し難民」が発生しているという報道が続いています。3~4月は、会社の転勤や学校の新学期に伴う異動期であり、年間引っ越し件数の3/1が集中する繁忙期です。特に今年は人手不足や働き方改革による業界の営業時間短縮の影響もあり、引っ越し業者の確保が厳しくなっているようです。
◆通勤時間は片道40~50分
NHKが5年毎に行っている「国民生活時間調査」によれば、2015年の平均通勤時間(往復)は1時間19分で、1995年からほぼ変わっていません。
都市規模別では東京が最も長く、1時間42分となっています。
◆従業員が職場の近くに住んでくれるメリット
従業員の立場では、必ずしも職場の近くに住みたいとは限りませんが、会社としては、従業員が事業所の近くに住んでくれたほうが喜ばしいものです。
長時間通勤で疲弊することなく業務で力を発揮できる、通勤手当が低額、緊急の業務や自然災害時の出退勤が容易、といったメリットがあるからです。
◆「近距離手当」を活用する企業
居住地をどこにするかは、言うまでもなく各従業員が自由に決定すべきことであり、会社は一切の強制をしてはなりません。
その代わり、職場の近くに住む従業員に「近距離手当」を支給することで、自発的に職場の近くに引っ越してもらうという方法があります。
「半径○km以内」や「本社最寄り駅から○駅以内」に住む者に対し「月額○万円支給」という形式が典型的で、クックパッド、サイバーエージェントほか様々な企業が採用しています。
◆引っ越し手当と注意点
似たような趣旨で「職場の近距離への引っ越し費用を補助する」という手当もあり、ロコンドやグリーなどが採用しています。
ただし、今年のように引っ越し業者の確保すらままならない場合、引っ越し費用が思わぬ高額となる恐れもあります。
手当の不正受給を防ぐためにも、「○回まで」「○万円まで」など上限を必ず規定することが重要です。
最近よく耳にする「サバティカル休暇」って何?
◆欧州を中心に導入
先日の新聞で、求人サイトを運営する会社が、3年勤務ごとに1カ月の「サバティカル休暇」(有給)を与える制度を導入したとの記事がありました。
この「サバティカル休暇」とは、一定の長期期間勤続者に、1カ月以上の休暇を与える長期休暇制度のことで、使途は自由なのが特徴であり、欧州を中心に導入されています。
◆各国の例
(1)スウェーデン
国の制度として導入されており、労働者は有給で最長1年の休暇を取得可能です。
休暇中の代替要員として失業者を雇い入れることが定められているため、失業対策にもなっています。
(2)フィンランド
ジョブローテーション制度が長期休暇制度の1つとして導入されており、フルタイムの労働者は「90~359日」の範囲で休暇を取得できます。スウェーデン同様、有給で、代替要員に失業者を雇い入れることになっています。使途の制限はありません。
(3)フランス
同じ企業での勤務年数が3年以上あり、かつ通算の勤務年数が6年以上で、過去6年間に当該企業で同制度を利用していないことを条件に「6~11カ月」の休暇を取得することができます。
使途に制限はありませんが、無給扱いです。
◆日本国内の例
国内でのサバティカル休暇導入事例としては、「ボランティア特別長期休暇」(リコー)、「積立休暇」(富士ゼロックス)、ディスカバリー休暇(MSD)、STEP休暇(リクルート)などがあります。
◆長時間労働の是正、育休取得の推進
サバティカル休暇は、企業の裁量により有給にすることも無給にすることも可能であり、使途に制限をかけることもできます。また、有給休暇を充当することもできます。
長時間労働の是正や男性の育休取得の推進などの風潮も高まりつつある中、長期休暇の1つとして導入を検討してみる価値はあるかもしれません。