「ベイヒルズ社労士事務所便り2017年10月号」を発行しました
監督指導による賃金不払い残業の是正結果(平成28年度)
◆監督指導結果の発表
厚生労働省は、時間外労働等に対する割増賃金を支払っていない企業に対して労働基準法違反で是正指導した結果(平成28年度分)を取りまとめ、公表しました。
全国の労働基準監督署が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果、平成28年4月から平成29年3月までの間に不払いだった割増賃金が支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめています。
◆平成28年度の是正結果のポイント
(1) 是正企業数:1,349企業(前年度比1企業増)
…うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、184企業
(2) 支払われた割増賃金合計額:127億2,327万円(同27億2,904万円増)
(3)対象労働者数 :9万7,978人 (同5,266人増)
(4)支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり943万円、労働者1人当たり13万円
◆遡及支払金額別の詳細
(1) 100万円以上の割増賃金の遡及支払状況
業種別でみると、「商業」が304件で最も多く、次いで「製造業」の267件が続いています。
業種別の労働者数でみると、「製造業」の19,447人が最も多く、次に「保険衛生業」の17,103人となっています。
(2) 1,000万円以上の割増賃金の遡及支払状況
業種別でみると、「製造業」と「商業」がともに34件、「保険衛生業」が23件で全体の半分を占めており、
対象労働者数は、「商業」9,563人、「製造業」7,617人となっています。
◆今後の取組み
今後も、厚生労働省による賃金不払残業の解消に向けての取組みや、労働基準監督署による指導は強化されていきますので、企業としても今まで以上に徹底した労務管理が求められます。
職場のストレス調査結果にみる「相談対応」の重要性
◆「労働安全衛生調査」最新版を公表
厚生労働省は、事業所が行う労災防止活動や安全衛生教育について調査した「労働安全衛生調査(実態調査)」の平成28年の結果を公表しました。
ここでは、調査結果から「職場のストレス」についてまとめてみます。
◆従業員は何にストレスを感じているのか
同調査によれば、「現在の自分の仕事や職業生活に関することで強いストレスと感じる事柄がある労働者」の割合は59.5%でした。この割合は平成25年以降、増加傾向にあります。
具体的な強いストレスの内容(複数回答)では、「仕事の質・量」(53.8%)が最多で、「仕事の失敗、責任の発生」(38.5%)、「対人関係(ハラスメントを含む)」(30.5%)と続いています。
◆従業員の心の健康のための4つのケア
強いストレスによる労働者のメンタルヘルスの不調は、精神疾患の発症、パフォーマンスの低下をはじめ、様々なトラブルの要因となります。
厚生労働省は、「労働者の心の健康の保持推進のための指針」において、メンタルヘルスケアの基本的な考え方として、以下の4つのケアが重要であるとしています。
(1) セルフケア(従業員自らが行う、ストレスへの気づきと対応)
(2) ラインケア(管理監督者が行う、職場への改善と相談対応)
(3) 産業医・衛生管理者等によるケア
(4)部の機関・専門家によるケア
4つのケアのうち(2)が企業に求められるものになります。
「ストレスは従業員個人の問題」と矮小化することなく、現状の把握・改善や、従業員が相談しやすい環境づくりが大切です。
◆相談対応はストレス減に効果あり!
前述の調査では、誰かに相談したことでストレスが「解消された」という回答が31.7%、「解消されなかったが、気が楽になった」という回答が60.3%ありました。
管理監督者や同僚が相談に応じるだけでも一定の効果があることがわかります。また、「対策の取組内容」(複数回答)として、35.5%の事業所が「相談体制の整備」を挙げています。
年に1回のストレスチェック実施だけがメンタルヘルス対策ではありません。相談対応で従業員のストレスを上手に取り除き、健全な職場の環境を維持しましょう。